■まずは簡単な培養土を使ってみよう!■
土の選択を間違えると、ずーっと虫や病気に悩まされたり、水撒きの回数が増えてしまったり、ちゃんと根が張らなかったりします。
なので、昔は水はけに適した土、水もちに適した土、清潔かつ有機物を多く含む土を自分で配合しなければなりませんでした。
現在では『配合済みの野菜用の土』が販売されており、安価ではありませんが性能は確かなものです。
多少高くても初心者上級者問わず、団粒構造の土で、かつ熱消毒されている有機物・微生物を含んだ土を買いましょう。
なぜ普通の土を買わないほうがいいのか、詳しくは下をご覧下さい。
●ベランダ栽培におけるよい土、悪い土
ホームセンターなどで売っている土の多くは、畑や庭先の花壇に向いた土なのです。
私たちはベランダで、そして容器の中に土を入れて栽培をするので、普通の基準で土を選ぶとえらい目に遭います。
では容器栽培に向いている土とはどのようなものなのか。お勉強しましょう。
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説明 |
土の状態 |
良い土 |
水はけがよく、水もちがよく、団粒構造で、清潔である。
有機物を多く含み、微生物が粘土質などをまとめ上げてつくられた土、または高温で圧縮された球状の土です。 一つ一つの粒そのものも大きく、直径は様々ですが、おおよそ2mm〜5mm前後が一般的です。
人工的に粒状にされたものがもっとも安定しています。
園芸店などで粒の大きな培養土を買えば間違いも無いでしょう。
また、似たような用土でハイドロボール、パーミキュライトがありますが、有機物を含みませんし、乾燥が速く、単体では野菜の栽培には向きません。 |
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悪い土 |
水はけが悪く、水もちが悪く、細かな土で、不潔である。
粘土質が強すぎたり、火山灰土が多すぎたり、
ネバネバ土とサラサラ土、どちらか一方に偏るとこうなります。
(厳密に言えばそれぞれに特徴はありますが、割愛)
粘土質が団粒構造の土のベースにはなりますが、
このままの状態では野菜にとって非常によくない土なのです。
また、熱消毒されていない土は不衛生なのでやめましょう。 |
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ベランダでは容器内に土を入れますので、土が耕せず、徐々に圧縮されて硬くなっていきます。
前後左右が容器の壁に包まれているのが災いし、圧縮される速度もなかなかに速いです。
圧縮された土は蒸し焼きの原因になりますし、根は張りづらくなり、栄養を留まらせておくのも難しい状態となります。
ですので、あらかじめ球状に固められている土を使うのです。
以上のことから、団粒構造(粒にされている土)の培養土を購入しましょう。
もしそういった培養土が見当たらない場合は、ハイドロボールやパーミキュライトが配合されている土を買えば、
団粒構造の用土にかなり近い環境で育てることが出来ます。
ちなみに、畑で栽培する際にも団粒構造であることが最良条件となりますが、畑の場合は土を起こし、有機物を混ぜ、
年に数回耕すことで作り出す事が出来ます。上質の微生物や菌類が団粒構造の土を生成してくれるのです。
容器栽培には容器栽培の、畑には畑のやりかたというものがあるんですね。
●いちいち黒土や赤玉土を配合する必要はあるか
そんな面倒なことをする必要はありません。まだ園芸が一般的な趣味として普及していなかった昔とは違い、
まったくの初心者の方でもすぐに手が出せるような土が販売されています。
上記でオススメした粒状の培養土は、黒土や赤玉土が配合された状態、または高熱圧縮された土が粒状になっており、
そのままなにも混ぜずに使用するのが一般的で、むしろ混ぜると土がダメになるのが早くなったりしますので要注意です。
『野菜一般用』とか、そんな感じの土を買えばどんな野菜でも育てられますし、
特殊な土の環境が必要な野菜には、それ専用の培養土が売っていますので、ご安心を。
園芸書ではやたら土の配合を薦めていますが、あれこそが敷居を高くしている原因だと思います。いかがなもんでしょう。
こだわるのもいいですが、野菜とご近所を思うのなら清潔で状態の良い土を市販で買いましょう、というお話でした。
●虫はなぜ発生するのか
厳密に言えば肥料の窒素成分なんかが絡んでくるお話なのですが、まずは土の観点から。
多くの土は熱で消毒殺菌していません。肥沃な土壌から袋詰めにしたり、人工配合で作られた土を販売しています。
特に、安価で販売されている腐葉土や堆肥にはかなりの確立で虫の卵が入っており、
目に見える卵よりも、目に見えない細かい卵(コバエやハムシ)が多く、これが虫の発生の原因に繋がります。
また、安い有機肥料(牛糞堆肥等)も熱殺菌をしていない事があり、それらをうっかり購入して使ってしまうと、
肥料にする過程にスキを狙って植えつけられた卵が数度の水遣りをきっかけに孵化を初め、ムシムシパラダイスになります。
●水はけとは
水をまいたとき、余分な水がプランターの底から流れ出る土は良い土とされます。
一般的に『水はけが良い』とされる土は、水をまいたあと、数秒〜数十秒で底から水が流れ出てきます。
つまり、団粒構造で、空気の通り道がたくさんあり、根が呼吸しやすい土となるのです。
この空気の通り道がないと、水が土と土の間にみっちりと留まってしまい、結果的に根が水で腐る要因となります。
●水もちとは
水はけみたいな言葉で紛らわしいのですが、ちょっと違います。
『水もちが良い』とされる土は、水の吸収が良い土のことさし、より長い間水を含んでいられる事を指します。
つまり、これが優れていると水まき回数が減るという事ですね。手間が減るので、大切な要素です。
これは土と土のスキマに溜まる水ではなく、土の中に留まる水を指します。
●水はけと水もちの両立
一見は両立しなさそうな水はけと水もちですが、もちろんちゃんと両立します。
ポイントは団粒構造。しかも、型崩れしずらい軽い土がオススメです。
簡単ですがイラストで説明しておきましょう。
<こんな感じが団粒構造の土です。スキマがたくさんありますね。白い点は土の粒の中の空洞。>
<水をまくと、スキマと土の粒の空洞に、みっちり水が入ります。>
<スキマが多く水はけが良いので、すぐに水は引きます。粒の空洞には水が残ります>
植物はこのスキマから呼吸し、そしてこの土の粒の中の水を摂取するのです。
●団粒構造の土の種類
赤玉土や軽石なども、使いようによっては団粒構造となります。
しかし、硬すぎます。しかも植物の成長を阻害する成分が含まれている事もあるので、
初心者がうかつに手を出すとうまく成長しないどころか、生育障害が発生します。
もちろん配合を正しく行ったり、処理をすれば問題なく使えますが、
初心者の方が陥りやすい『なんだかわからないけど病気っぽくなった』というのは土が原因であることが多いのです。
配合が済んでいる土を買うことの意味、メリットは、そういった困った現象を簡単に回避できる事にあります。
●団粒構造の土のデメリット
さまざまな利点がある団粒構造の土ですが、これにも弱点があります。
@安価な土だと、1年程度で土が潰れ、水はけの悪い土に早代わりする。翌年、翌翌年に再利用が難しい。
A枯れた根の除去が簡単なようで面倒。(いい土なので、普通の土よりも根が多く張ります。)
以上2点の欠点があります。Aに関してはどうしようもないので、がんばって取るしかありません。
<土の粒の空洞がつぶれ、さらに崩れた土がスキマを埋めている図>
ここまで崩れてしまうと、もはや水はけもわるく、水もちも期待できません。
安価な土ほど崩れるのが早いものです。商品(土)の買い替えのサイクルを早くするためでしょう。
だからといって高価だから長持ちかというと、そうはいいきれません。買う前にしっかりと下調べをしましょう。
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